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コンテキスト・ギャップの分析方法情報システムに関わる人間について、「提供者」と「利用者」とを対比させながら分析するためのフォーマットを以下に示す。
これを情報システム定着までの各段階(例えば企画、開発、導入、運用の各段階)ごとに作成し、それをもとに、(1)各時点におけるコンテキスト・ギャップの分析を行い、次に(2)コンテキスト・ギャップが時とともにどう縮小・拡大するかを分析する。
情報システムが定着した場合だけではなく、結局定着しなかった場合も同じフォーマットで分析できる。
3種類のコンテキスト、すなわち「正当性」、「妥当性」、「不可避性」のそれぞれについて、ギャップの有無を分析できる。
ここで、ある認識対象について一方の当事者のみが特定のコンテキストを持つ場合は以下のように、「ギャップが存在する」に含める。
コンテキスト・ギャップが存在しない・同一の認識対象について当事者の双方で同種のコンテキストを持つ場合oコンテキスト・ギャップが存在する・同一の認識対象について当事者の双方で異なるコンテキストを持つ場合・ある認識対象について一方の当事者のみが特定のコンテキストを持つ場合コンテキスト・ギャップを時系列で捉えた場合、「コンテキスト・ギャップが変化する/しない」の視点、および「運用段階でギャップが存在する/しない」の2つの視点から、ギャップの変化のパターンを4つに大別できる。
始めから終わりまでギャップが存在しないパターンでは、情報システムがすっきり企業に入っていくであろう。
最初はギャップが存在したが運用段階でコンテキスト・ギャップが変化する2つのパターン(ギャップが増大、ギャップが解消)においては、実際には、導入時にギャップが発生し運用時になってギャップが急減など様々な詳細パターンが存在しうるが、ここでは単純化して示してある。
解消できたパターンは、当事者のコンテキスト変化が起こる場合である。
残る2つのパターンは、導入しようとしたシステムがうまく定着しないパターンだ。
B社の失敗再考:コンテキスト分析それでは、上記の分析フレームワークで実際の事例を分析してみよう事例として、先ほどで扱ったB社をとりあげよう。
B社がERP導入を決定した背景先ほどと若干重複するが、B社がERP導入を決定した背景についてまず簡単に振り返っておきたい。
B社は耐久消費財の中堅メーカである。
従業員は1、000名近くで、業績も順調であるが、ここ数年競合他社が業務改革を進めており、経営トップ層からミドル管理者に至るまで「当社も業務改革すべきである」という認識を持つに至っていた。
その際、経営革新と情報システム革新とは連動させるべきであるとの考えのもと、大手ソフトウェア・ハウスからの提案もあり、ERPパッケージを導入して情報システムの再構築を目指すこととなった。
MRPシステムを母体として人事・給与、経理・会計、受注管理、顧客管理などの諸機能が統合されたERPパッケージは、製造業を営むB社にとってシステム再構築構想にぴったりの道具であると思われた。
ERP導入決定時のB社において、利用部門ではパソコンやOA機器はさほど普及していなかった。
一方、ソフトウェア開発は外部に委託してきたため、情報システム部門の仕事はコンピュータの運用とソフトウェア保守が中心であり、ソフトウェア開発技術の蓄積は十分でなかった。
コンピュータ・プログラムの2000年問題をはじめ、データ項目の桁不足など未処理の問題は山積みしていた。
これらの問題への対応はシステム全体の大幅見直しになることが予想され、その負担は莫大なものになる見込みであった。
山積みの問題を一挙に解決できる方策が、B社では待ち望まれていたのである。
このような状況を背景にして、経営者が問題を一挙に解決する「魔法の杖」としてERPパッケージの導入を指示した。
業務改革とERP導入活動のスタートB社では、経営トップの主導で、業務改革とパッケージ導入を連動させる全社活動がスタートした。
部分的な改革を目指すのではなく、情報システム全体を一気にパッケージに置き換えることにより、これまで停滞していた業務改革を力強く推進できると経営トップは考えた。
パッケージ導入業者は、業務部門が、これを機会に主体的に改革に取り組むことが肝要であり、その際、従来の業務方法に固執せず「パッケージのやり方に業務を合わせる」のがコツであると説明した。
経営トップは、業務改革案自体をパッケージから学ぶことができると理解した。
業務改革活動のために十数個の改革チームが編成された各チームには取締役クラスの責任者が配置され、リーダーには部長クラスが任命されており、全体で従業員の1割を超える人達が活動に参加した。
情報システム部門からも、パッケージの対象外の領域のシステムとの対応をはかる目的で、各チームごとに1、2名が参画した。
パッケージ主導の業務改革は、細かな社内事情に束縛されずに、大胆に行われ、短期間で成功するものと思われていた。
業務改革チームにおける混乱編成された十数個のチームのうちの1つである生産システム・チームについて、その状況は次のようなものであった。
B社では近年製品仕様が多様化の一途をたどっていたため、需要予測や部品の設計変更の徹底に支障を来していた。
これまでは人の判断に依存しながら、基準生産計画に基づく部品展開・所要量計算に適宜補正を加えて対処してきたが、B社としての明確な生産方式が体系化できているとはいえず、パッケージ導入を機に生産管理方式の確立を目指そうということになった。
要求分析段階において実際にこの作業に取り掛かろうとした途端、パッケージの日本語化の遅れのせいで説明書が入手できないことが判明し、仕方なくパッケージの詳細が確認できないまま、ユーザ要求定義の作業を先行させることになった。
ところが、もともとB社の生産方式が確立できていないのに、手本となるパッケージのノウハウも学ぶことができず、作業開始直後に、要求のベースとなる業務体系を分析する段階ですでに行き詰まってしまった。
苦難の末に当チームが発見したのは、B社が従来から行なってきた生産管理業務の運用方法は、需要予測が困難な取引き形態の中で培われてきたユニークなものであり、これが当社の強みとなっているのだという事実だった。
B社でこれまで実施されてきた生産管理は、部外者に説明できるだけの体系化がされていなかったことと、情報システムがそれに合わせてあまりにも複雑で変更困難なものとなってしまっていた点で問題ではあったが、だからといってパッケージが提供するであろうお仕着せの生産システムに置き換えたのでは、別のもっと大きな問題が起こるだろうと思われた。
難航する業務改革作業生産システム・チーム以外の他の改革チームも各々問題を抱えていた。
部品表/製造手順表管理を担当するPDMチームでは、パッケージの仕様説明がないために独自に複雑な情報構造をデザインしてしまっていた。
受注管理チームにおける問題は一層深刻であった。
とりあえずプロセス・モデルをデザインした後、ようやくパッケージの仕様が明らかになったのだが、それがB社側で思い描いていた受注管理機能とはまるで異なるものであることが判明したからである。
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